やっぱ音楽って・・・

映画「グリーンブック」トロント映画祭受賞作が面白そう

2018年のトロント映画祭で観客賞をとった「グリーンブック」(原題Green Book)。扱いにくい人権問題をコメディでみせる良品だそうで、まったく注目されてなかったのが、一気にアカデミー賞を狙える重要作品になったようだ。

というのも、トロント映画祭で観客賞をとった作品は軒並みアカデミー賞の候補になったり、実際賞をとったりしています。

「スリービルボード」「ラ・ラ・ランド」「ルーム」など、「グリーンブック」同様それまで注目されてなかったのにトロント映画祭で急浮上してきた作品も多数。

トロント映画祭は他の映画祭と違って、審査員や特別な会員がジャッジするのではなく、一般の観客の投票によって受賞作が選ばれるそうです。

「グリーンブック」はどんな映画か

1960年代のアメリカ。都会の底辺で生きるイタリア系白人トニー・リップが上流階級出身の人気黒人ジャズピアニスト、ドン・シャーリーにドライバーとして雇われ、アメリカ南部へのコンサートツアーに出発。人種偏見の残る南部で起こる様々な出来事をコメディタッチで描いた作品。実在の人物、出来事をベースに描かれています

ロードムービーでいわゆるバディものですな。

バディものとは男2人組の友情を描いたもので、今回は貧乏で粗野な白人男性と金持ちで上品な黒人男性という、まったく逆の出自、性格の2人のやり取りが見もの。

なにせ、監督は「ジム・キャリーはMr.ダマー」、「メリーに首ったけ」など、どコメディな印象が強いファレリー兄弟の兄、ピーター ファレリー

深刻になりがちな人種問題を、さらっと描いてかつ最後には泣かせるという。トロント映画祭では最初は無名だったのが、最後には人々の話題の中心だったそうだ。

白人=金持ち、有色人種=貧乏というこれまでのステレオタイプの逆の状況を描くことで観ているこちらがはっとさせられるというか。トランプが支持される状況っていうのもこういう見落としていた部分があったんでしょうね。

出発地での北部では上流階級のドン、労働者階級のトニーという位置付けだったのが、黒人がレストランやホテルで様々な制限を受ける南部への旅行を通して、そのあまりの理不尽さにさすがのトニーも憤慨。雇い主であるドンを守る行動をとっていくことでバディぶりが発揮されます。

スタッフ

監督は前述した通り、ピーター ファレリー。製作総指揮としてアフリカ系アメリカ人のオクタビア・スペンサーが参加していて、白人男性視点ではなく、黒人そして女性の視点が加わっているのも興味深い。オクタビア・スペンサーは「ドリーム」「シェイプ オブ ウォーター」に女優として出演したりしています。

黒人ジャズピアニスト、ドン シャーリーには『ハンガー・ゲーム』、『ムーンライト』のマハーシャラ・アリ。イタリア系白人トニー・リップを演じるのは『ロード・オブ・ザ・リング』『イースタン・プロミス』『ザ・ロード』のヴィゴ・モーテンセン

グリーンブックとは

なぜ、映画のタイトルが「グリーンブック」(原題)なのか。

1960年代、人種差別が色濃く残るアメリカ南部では例えばレストランでも黒人は入店できなかったり、座る席が制限されたりしていました。

差別は習慣的に行われていましたが、ジムクロウ法という法律も存在して(1964に撤廃)、差別は明文化されていたものになっていました。

そんなアメリカ南部で、レストランなどの公共施設でどんな制限があるかということが書かれた黒人向けの旅行ガイドブックのこと。

こんな本があったということにも驚くし、当時の深刻さを感じずにはいられない。

ドン・シャーリーとは

ここでディープジャズファンの筆者は、主人公の一人、実在の黒人ピアニスト、ドン・シャーリーについて語らねばなりますまい。

しかし、残念ながら筆者はドン・シャーリーについてまったく知りません。

まあ、でもこれがひとつの答えになるのですが、ドン・シャーリーはメインストリームのジャズの人ではなく、また有名なジャズメンとの交流もなかったのではないでしょうか。

とりあえずYouTubeでみつけた音源です。

プロフィールを探っていくと、生まれたのは1923年。ジャズミュージシャンでいうとマイルス・デイビス(1926年生まれ)とほぼ同世代、ビバップの第2世代に当たります。

マイルス・デイビス、チャーリー・パーカー、ビル・エバンスなどが活躍したいわゆるジャズのフィールドは実は当時アメリカで非常にマイナーな世界だったようなんです。

その証拠に、ジャズの名盤を連発していたBlueNotePrestageVerveといったレーベルはすべてマイナーレーベルで、ほとんどの有名ジャズミュージシャンは実はインディーズミュージシャンだったのです。

その状況が変わったのは1955年にマイルス・デイビスがメジャーレーベルCBSと契約してから。それでもメジャーレーベルで作品を発表するジャズミュージシャンは少なかったのです。

そもそもが場末のクラブから発展していった貧乏黒人コミュニティの音楽だったジャズ。

上流階級に生まれ、クラシックを習得し、クラシックの音楽家としてキャリアをスタートさせた、ドン・シャーリーにとってはNYのハーレムを中心に勃興したモダンジャズとは相容れなかったものだったのではないでしょうか。当初は。

ドン・シャーリーと同じく裕福な家に育ったマイルス・デイビスは、チャーリー・パーカーに憧れ、自らこのジャズコミュニティに身を投じます。親を騙すようなことをしてまで・・・

今から見るとジャズって一世を風靡したかのように見えますが、実は違うんです。なので当時のメジャーな音楽シーンと混同してしまって、交流があったかのように思ってしまいますが、違うんですねー。

逆にジャズって独特の音楽語法を確立したことで、他との交流を拒絶していたのかもしれないですね。その語法を身に付けた人にしか入ってこれないすごく閉じられた世界だったんじゃないかなと思うんです。

ドン・シャーリーはすでにクラシックの語法を身に付けメジャーで活躍したミュージシャン。すでに確立されていたジャズコミュニティに入り込んでいくこともなく。

そんなかれでも、映画で描かれたような南部の旅を通して、黒人としてのアイデンティティーに気づいていく。

現在購入できるドン・シャーリーの作品は少ないのですが、残された音源を聴くと、ピアノ、ウッドベース(コントラバス)、チェロという独特のトリオ編成だったりします。クラシックとジャズ、ブルースという2つのルーツを追求することが、彼にとってのアイデンティティーだったのかも知れませんね。

ドンシャーリーについてさらに深く掘り下げてみました

日本公開は?

さて、かんじんなところで僕らはいつ見られるかですけど。「グリーンブック」の日本公開は来年春、2019年3月予定になってます。うーん、もっと早くならんかなー。

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